木曽の匠と出会う
Vol.03 桧物屋木工
さしものやが作る逸品
桧物屋(ひものや)木工のご主人は、「昔は“さしものや”をやっていた」と言う。
「さしものや」とは聞き慣れない呼び方で、目を丸くしていると「建具屋のこと」だと話してくれた。
地元の大工さんが盛んに家を建てていた頃は、一軒を丸々請負、新しい家を作ると200本もの建具が入ったそう。
二間続きの和室は必ずあり、襖や欄間が入り、部屋と部屋の間や脇には廊下があった。
部屋と廊下の間には障子が入り、廊下で部屋と部屋を行き来する。
通路としてだけでなく外からの直射日光や冷気を廊下が引受、部屋へ直接、湿気や暑さや寒さをいれないことで部屋にいても快適だった。
洗濯物の干場だったり、必要な空間だった
と、日本家屋の間取りをさらっと話す。
今じゃ、家の間取りも変わり、客間や廊下が無い家をハウスメーカーが作るから、そんなにたくさんの建具が必要とされなくなり、既製建具が使われるようになったそう。
現代風の間取りでは廊下をムダと考える傾向にあるが、廊下は廊下の必要が確かにあるとあらためてご主人の話を聞いて思う。
この工場が出来て55年、現在は80半ばの主人。
7~8人の職人さんを抱えて建具とオーダー家具をたくさん作っていたそう。
今は、広葉樹と針葉樹を木曽の営林署から直接仕入れ、材種は幅広い扱う。
木の反り、曲り、かたさ、におい、色艶。
木の「さま」を見て木製品の材を作り、オーダー製品作りにひとりで黙々と没頭する日々。
桧物屋木工の木工品はさしものやの細工が活かされ、機能的に優れ釘を一本も使わない作品。
つなぎ目が一体化してデザインフォルムもきれいに仕上がっている。
お弟子さんは持たないが、そんな作風を慕い、上松技術専門校の訓練生がご主人をよく訪ねる。
ご主人の工場の機械で実際に作品を作り、デザインや形、機械の扱い方、細工の仕方までよく相談を受けるのだとか。
「木工関係の職人になろう!」と志す訓練生がもっとも信頼する師匠だ。
株式会社桧物屋木工
長野県木曽郡木曽町福島
Tel.0264-22-2317 / Fax.0264-322-2317(切替)